ドイツ視察報告
第三章
住みやすい日本を! 更新日 2001/02/13 掲載日 2001/02/13
作りましょう!

「室内環境対策の最前線」ドイツ視察ツアー・レポート
このレポートは協会のライター木村元紀氏の執筆によるものです。

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★ 第3章 環境医学研究所の治療システムと建築対策、そして環境施設
ルノー博士 臨床環境学の概要、ドイツにおけるアレルギーや化学物質過敏症の現状を第1章第2章では紹介した。
この章では、環境施設=IFUにおける治療と施設の内容を紹介する(ルノー博士談)。
■環境病に関する診断

現代の環境病はさまざまな要因が絡み合って起きている。生物化学的な個人差も大きい。そのため、IFUで行なわれる診察、検査も多岐にわたる。

  1. 血液中の有害物質の検査から始める。第1がメタル=金属の有無。最初に歯科治療で用いられた金属、次に手術で身体の中に入植された金属を調べる。ここで個人差に応じたアレルギーの診断をする。
  2. ビタミン、タンバク質、微量元素などがどのように供給されているか。つまり摂取している食料品の調査を行なう。
  3. 肝臓の検査。解毒機能がどこまで機能しているのか。
  4. 腸の検査。腸は全体で300平方メートルという非常に広い面積を占めており、環境と個人の身体との境目になっている。腸の透過性、便の検査も必要になる。非常に腸を投下しやすい環境有害物質としては、農薬、歯科治療に使われる金属などが挙げられる。
  5. 食料品アレルギーの検査。免疫システムが機能しているかどうか。血液検査とパッチテストを行う。
  6. いわゆる細菌、カビなどが身体の中で発生していないかどうか。有害物質によって身体の免疫機能が低下していると、体内の細菌やカビが増殖しやすくなる。例としては、カンジダ菌などが挙げられる。
  7. 乳頭の負担度、忍耐度の検査。これはドイツでは非常に重要な意味を持っている。
  8. 老化現象の状況。慢性的にアルコールを摂取しているかどうか、薬品・抗癌剤などを投与されているかどうか。こうした物質によって、腸の機能が妨げられている。
 また、必要に応じて、北里研究所病院の石川哲先生らが開発した瞳孔反応検査を行う。これは自律神経の反応異常を検出する機器で、化学物質過敏症を客観的に診断する方法のひとつ。

■寝室をクリーンにする「睡眠建築」のすすめ

アレルギーをはじめとする現代の環境病は、食品アレルギーや化学物質が密接にかかわっている。その中で室内の有害物質のコントロールも重要になる。
アレルギーの人にとって、この家なら誰にでも絶対に良いというものはない。個人個人の意見を尊重しながら建築しなければならない。たとえば、私(ルノー)にとって天然ラテックスのマットレスやムクの木はとても快適だが、何人かの私の患者たちは近寄らない。天然だから良いわけではなく、人によっては化学繊維のほうが良い場合もある。
私たちは1日の大半を室内で過ごしている。室内といっても自宅の中だけとは限らない。車の中にはプラスチックやマットレスなど有害物質がたくさんある。家の中で汚染空気を吸い、そして出かける時に車に乗ってまた毒を吸い込み、勤め先の事務所に入ってまた同じことを繰り返す。このような鎖をどこで発てば良いのだろうか。
もっとも重要なのは寝室の空気環境である。というのも、人間は、夜中、寝ているときに肝臓による解毒作用が起きている。寝室をクリーンにすることで、昼間に吸い込んでいた毒を吐き出すことで、翌日は気持ちよく目覚めて回復することができる。
通常の寝室には建材から出る有害物質だけでなく、洋服ダンスや洋服そのものから出る有害物質もある。外で有害物質を吸い込んで家の中に持っていき、クロゼットにしまって、その有害物質を夜中に吸いながら眠っているという状態に近い。これに対して、寝室は良い建材を使って建築し、家具を入れず、できるだけシンプルにしておくことが大切である。
また人間はよく眠れないと免疫機能が壊されて、病気になりやすくなる。この研究所では、患者さんの状況に合わせていろいろなタイプの部屋を設けている。個人差があるので、試しに寝てもらい、どのタイプが良いか体験する。そして、プランニング事務所と話をして家を作るという形を勧めている。このように寝室の環境に配慮して建てることを「睡眠建築」という。
ところで、ドイツでは非常にたくさんの人が、芳香剤や香料に対するアレルギーを持っている。深刻な例では思考障害を起こす。したがって、香料に対する配慮も大切。公共空間では、禁煙ゾーンだけでなく、香料のフリーゾーンも必要になると考えている。

■ 物理的ストレス・電磁波のシールド

断熱性の高い気泡レンガ 次に、研究所の建物についての考え方を紹介したい。現在の建築では、エネルギー節約のために壁を厚くしなければならない。しかし、私はあまりにも断熱しすぎて、まるで魔法瓶のような家を建ててしまうことに疑問を感じている。
そこで断熱のためのプラスチックの材料(ポリスチレン等?)を使わず、素材自体に断熱性がある気泡レンガを用いている(左写真参照)。
暖房は隣接したクアハウスから引いてきた温水を利用した大型のパネルヒーティング・システム(右下写真参照)。
ルノー先生の部屋 ボイラーのオイルやガスの臭いを排除している。
人間のストレスの原因には、化学的生物学的な要素に加えて物理学的な要素も影響している。たとえば電磁波過敏症の人がいることも既に知られている。そのため、この建物の小屋組みでは、鉄筋を入れずに昔の伝統構法である「樽型アーチ構法」を採用し、鉄筋によって発生する電磁波を抑えている。さらに電機配線にも注意が必要である。この研究所に使われるケーブルは総計3キロメートルにも及ぶ。
電磁波シールド用カバー これをすべてシールドして室内パイプラインに収め、電磁波が外に漏れないようにしている(左写真参照)。
また、金属性のバネの入ったマットレスからは非常に大きな電磁場の乱れが測定されている。正常な状態でも電磁波は出ているが、金属バネのマットレスは通常の3倍にもなる。
また仕事場やキッチンでも電磁波は発生しているが、そこでは、人は動いているので、継続的に長時間電磁波にさらされることによる影響は少ない。ところが、ベッドでは7〜8時間じっとした状態で寝ている。寝室では身体を休めなければならない。ベッドから物理的ストレスの原因を減らすことが大切である。
なお、電磁波過敏症が起きるのは体内の金属から来ている。まだ調査段階で予測の段階だが、体内の金属、つまり歯の治療によって使われる金属が関係していると考えられる。

■ 研究所の内装仕様と「クオリティ・オブ・ライフ」

IFUの室内  研究所の室内は、木製の建具には麻のオイルと蜜蝋だけを使っている。天井は松材で表面仕上は麻のオイル。柱はデンマーク製の集成材。農薬は使っていない(右写真参照)。
木を使う場合は殺虫剤に注意しないといけない。国によっては、森林で育っているときに殺虫剤を大量に散布する場合がある。
木材に自然塗料を使う場合、柑橘類のオイルは非常に臭いがきついのでアレルギーの人には向かない。現在は臭いのしない自然塗料も作られている。

ムクの木を基調とした患者用の部屋 患者の滞在用の部屋は4室ある。収納家具はヒノキ製。塗料などの加工は何もしていない。金属も使わず、木の釘を用いている。
ベッドはサクラ材に蜜蝋で塗装している。ベッドにも金属製の釘は使用していない。電磁波はすべてシールドされている。マットはラテックス・フリーのポリエステル製。ラテックス・アレルギーの人も使える(左写真参照)。
バスルームは、セラミックのタイルと砂をミックスした石膏の化粧塗り。プラスチック製の素材はいっさい使っていない(右下写真参照)。
バスルーム 私たちの研究や治療法への反対者の一番大きな論理は「現代人はこれほど健康で、これほど長寿社会が続いているのだから、環境医学など必要ない」という意見である。
しかし、私たちの仕事は生活のクオリティにかかわってくる。統計を見れば、50歳になれば非常にたくさんの人がガンになるし、アレルギーも多い。環境医学という観点を抜きにすると、本当に価値のある生活、価値のある生き方ができなくなるということを意味する。
私たちは、患者さんと療養のために旅行にも行くし、四つ星のホテルにも泊まる。その場合は、ホテルにあらかじめ電話をして、ラテックスアレルギー患者のためにポリエステル製のベッドに替えてもらえるように頼む。有害物質がない部屋、食品のアレルギーにも気をつけないといけない。アレルギー患者さんのために、私たちができるサービスは、生活が楽しくできて、うつ病状態に陥らないように配慮すること。つまり「生活のクオリティ」がキーワードになる。アレルギーの人たちにも楽しい生活があるということを示すことが、私のコンセプトだ(第4章へ続く)。

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