ドイツ視察報告
第二章
住みやすい日本を! 更新日 2001/02/13 掲載日 2000/11/12
作りましょう!

「室内環境対策の最前線」ドイツ視察ツアー・レポート
このレポートは協会のライター木村元紀氏の執筆によるものです。

ドイツ視察報告のはじめに戻る  アメリカ視察報告を見る  「環境施設創設に向けて」に戻る
★ 第2章 化学物質と「キレる子供」の問題
ルノー博士 前回に引き続き、ルノー博士のレクチャーを掲載する。なお、通訳を介した話を基に整理したもので、数値その他の詳細データについては文献上の裏付けを取っていないことをお断りしておく。また、カッコ内は筆者による補足である。
■母乳に含まれる350種類の有害物質

次に食品の中に含まれる有害物質の話をしたい。98年にドイツ国中の食料をモニタリングした調査で、22種類の農薬の検査をした。 その結果、67%のオレンジの果実に、皮と実の中に農薬の残余が認められ、そのうち2.7%のオレンジが許容量の濃度を超えていた。 99年にベリルン連邦研究機関が行なった調査でも、許容量を超える農薬の残留量が増えているという結果が出ている。特に危険性が高いのはニンジンである。ドイツでは子供たちが非常に好んで食べる野菜のひとつだが、調査対象の17%に許容量を超えた残留農薬が認められた。

さらに深刻なのは、赤ちゃんの一番大切な食品である母乳だ。イギリスの調査では、母乳の中に350種類の有害物質が認められた。
われわれ人間は、食物連鎖の一番最後にいるため、あらゆる有害物質を全て取り込んでいる。これらの有害物質は油脂性で脂に溶ける。 すると母体に入った有害物質は、最終的に母乳の中に溶け込むということになる。 たとえばダイオキシン。この調査では、母乳中のダイオキシンの濃度が許容量の42倍もあったという結果が出ている。あるいは香料、サンオイル、ドライクリーニングの溶剤、その他、建築材料に含まれている有害物質などが母乳に含まれている。これらの有害物質を、母親が与えた乳を飲んでいる赤ちゃんが全部吸収していることになる。

■農薬、メタル、添加物、そして建築素材のクロス・アレルギー

食料品には農薬だけでなくメタルも含まれている。ヨーロッパでは約2万種類の食品添加物があり、メタルはその中のごく一部である。
たとえば食料品を新鮮に保つために使われる金属として、銅やパラジウムがある。これらの金属は歯科治療や金化合物にも含まれている。 こうした食料品に含まれるメタルが、結果的に歯の金属アレルギーを呼び起こしているのである。
これらのアレルギーの原因となる物質を、身体から排出する必要がある。そのためには建築、あるいは建築素材についての対策が関わってくる。

たとえば天然ラテックス(ゴム)のアレルギーの人がいる。ラテックスはマットレスなどいろいろな建築材料の一部として使われている。そしてラテックス・アレルギーの患者は、クロス・アレルギーとしてさまざまな食料品のアレルギーが同時に起こることがある。 パイナップル、パパイヤ、マンゴ、アボガド、バナナ、ジャガイモ、キビ、メロン、イチジク、トマト、モヤシ、大豆、桃、栗など、他の果物や野菜を食べてもアレルギーを起こす。(一見、ラテックスとは何の関係もないような食料品とクロスしているわけだ)。 クロス・アレルギーを持ったラテックス・アレルギーの人の対処法としては、ダイエット療法として反応を起こす食料を食べるのを辞めるという方法と、自分たちが住んでいる生活範囲の中からラテックスを取り除いてやる方法がある。なお、こちらの研究室では空気中のラテックス量もコントロールしている。

■ ADHD「注意欠陥多動性障害」とリタリン

子供の行動異常、いわゆる「ハイパーアクティビティ」という問題がある。(精神疾患の世界で「ADHD(Attention Deficit Hyper-activity disorder)=注意欠陥多動性障害」と呼ばれている症状で、落ち着きがなく授業中でも教室を動き回ってしまう、あるいは破壊的な問題行動を持つような子供たちのこと)。
現在、先進国では行動異常の子供たちが増えているといわれるが、ドイツでも同じ状況である。従来の治療方法では「リタリン」という薬を使っている。(「リタリン」は商品名。薬剤名は「メチルフェニデート」。精神刺激性薬剤、中枢神経興奮剤。依存性がある覚醒剤の一種)。このリタリンは爆弾のように危ない薬だ。
ドイツでは麻酔薬取締法で規制されている。製造メーカーでも中毒症になる危険性のある麻薬と表現している。特に問題なのは、リタリンの服用を中止する時に注意しないと自殺の危険性があるということである。
また、この薬を止めてしまうと非常に攻撃的になる。99年にアメリカで2人の高校生徒による銃乱射(コロラド州デンバー郊外のリトルトン高校)が起き、15名が死亡した事件があったが、この2人の生徒はリタリンを服用していた。しかしこのようなニュースは医学雑誌の中でも、ごくわずかしか掲載されない。アメリカの学校では20%の生徒たちがリタリンを飲んでおり、リタリンの製造量は90年から500%も増加している。(一説では、アメリカでは20人に1人の生徒がADHDと診断され、そのうち70%がリタリンの投与を受けている。また、リタリンの生産量はこの10年間で8倍に増えたという)。

では、行動異常の原因は何か。本当に精神の問題から来ているのか。つまり行動異常の子供たちに対してリタリン以外の治療法があるのか、閉鎖病棟に閉鎖してしまわなければいけないのか。それとも環境が何か影響を及ぼしているのだろうか。

■ ADHD、食料品アレルギー、室内空気汚染との関係

私たちは、前述したような食料品や添加物によってADHDという症状が生まれるのではないかという疑問に突き当たった。
すなわち、子供たちは自分たちの神経システムの中で、食料品や環境汚染に非常に敏感に反応しているのではないかということだ。

たとえば、エガー教授による食料品アレルギーとADHDとの相関関係を表したデータがある。色素・防腐剤のアレルギーがある人の79%がADHDの患者。同じくミルクが64%、チョコレートが59%、ブドウが50%麦が49%、チーズが45%、卵が40%。
これはごく一部の例で、実際には各個人を検査していかないと明確な答は出てこない。
しかし、様々なビデオ撮影による調査で、カビなどの室内の有害物質、食料品中の有害物質が、行動異常の原因になるということが証明されている。

--------(以下、ドイツのテレビ局の番組を録画したビデオの解説)-------------
1つめは行動異常の症状というより、抑鬱的な腹痛の症状が出てくる11歳の子供の例である。
普通の食料品を食べただけで、このような症状になる(ワーワー泣き叫びながら暴れる子供の様子)。何度も腹痛を起こして小児科の医院に通っていたのに治らなかった。母親はこの子供を連れて、心理学者から精神医へ、また別の精神医へと色々な診療所を回ってきた。2年前にこのバード・エムスタールでアレルギーテストを行ない、或る種の魚に反応していることがわかった。
今では幸せそうな子供として帰っている。「本当に表情が良くなった。悪夢だった」と母親は述懐している。

2つめの例は、ハイパーアクティブな子供で、特別学校に行かなくてはならなくなった。
この子は、綴り方も他の子供たちとまったく同じようにできる。普段はとても綺麗な文字を書く。ところが、いわゆるグルタミンを摂取すると約10分後に文字が書けなくなってくる(キチンとした文字を書いていた状態から、急に枠線からはみ出してヨレヨレになっていく様子が確認できる)。
子供の症状を判断する時、非常に良い兆候として、このように文字を書く様子がどう変わっていくかを観察することが両親にとって要となるだろう。

3つめの例。この学校では、休憩時間にお菓子を食べても良いことになっている。おやつの時間が終わると、先生方が注意をして子供の様子を観察する。それまでおとなしかった子供が、休憩時間にチョコレートを食べた。この中には色素が入っている。そして約10分後に暴れ始めた。この調査が始まるまでの5年間、一人の医者もこれが食料品による反応であることには気づかなかった。通常のADHDの診断としてリタリンを処方され、最後には1日8錠も飲んでいた。
食料品と行動異常の関連に気づいたのは、アメリカのバッファロー大学小児科のドーリス・ラップ助教授。

---------------------------------------------------------------------
ビデオに登場した子供たちと同じような反応は化学薬品によっても起きる。
たとえばカビや塗料の溶剤に反応する子供は、学校のクラスに入った途端に問題児と変わってしまう。実際には、このような子供たちは非常に頭の良い例が多い。
彼らにとっては、エコロジーに則って建設された学校に行くことが非常に重要なポイントになっている。そこで勉強して能力を伸ばさないと、最後は精神病院に入れられてしまうからだ。

ここで強調したかったのは、子供の行動異常は化学薬品だけではなく、いろいろな物が網の目のように絡み合って出てくる症状であり、きわめて多角的に見ていかなければならないことである(以下、第3章に続く)。

ドイツ視察報告のはじめに戻る  アメリカ視察報告を見る  「環境施設創設に向けて」に戻る



このページは、特定非営利活動法人 生活環境協会が提供しています。