ドイツ視察報告
第一章
住みやすい日本を! 更新日 2000/10/01 掲載日 2000/10/01
作りましょう!

「室内環境対策の最前線」ドイツ視察ツアー・レポート
このレポートは協会のライター木村元紀氏の執筆によるものです。

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★第1章 ルノー博士のレクチャー・臨床環境学とドイツの現状
バード・エムスタールはドイツのほぼ中央に位置するヘッセン州カッセルの 南西郊外にある。そして、緑の絨毯が広がる田園風景の一画、なだらかな丘の 斜面に、IFUとクアハウスが周囲の自然に溶け込むように配置されている。 環境に恵まれたリゾートの雰囲気だ。皮膚科の医師でもあるクラウス・D・ル ノー博士は、1989年にIFUを設立し、食物アレルギー、金属アレルギー、 化学物質過敏症、電磁場による障害など、さまざまな要素が絡み合う現代の「環 境病」の治療と研究に取り組んでいる。以下はルノー博士のレクチャーをまと めたものである。

■ 環境病とバイオケミカル・インディビジュアル

−−病気の原因は1つの成分だけで決るわけではなく、化学的、生物学的、物理 学的な要素が関わってくる。そのため、患者と5分だけ話をして判断するのでは なく、念入りに問診を繰り返して、さまざまな環境の影響を採り入れて考えてい くということになる。私たちは、これを臨床環境学、あるいは「応用環境医療学」 と呼んでいる。

臨床環境学を考える上で一番大切なことは、バイオケミカル・インディビジ ュアル、つまり生物化学的な個人差ということである。たとえば、許容量をいか に決めるかという問題がかかわってくる。1杯のビールで酔っ払う人もいれば1 0杯飲んでも平気な人もいる。一般の人向けに作った許容量は過敏症を持ってい る患者には当てはまらない。

こうした個人差の要因としては、まず第1に、環境中の有害物質による負担 の影響が大きい。特に塩化炭化水素系の物質、防腐剤、PCB、アマルガムなど が関係している。たとえば、PCBはドイツでは既に禁止されているが、いろい ろな建築材料の中にまだ含まれており、PCBが含まれた建材が発見されたため に、学校が一つ取り壊さされた例もある。
第2に、微量元素や蛋白質、ビタミンなどをどのように摂取しているか。つ まり各個人の食生活ということである。
第3に、免疫システムの問題。そして解毒能力にかかわる肝機能の問題であ る。このような個人差があるために、1つの物質が体内にある一定量入って来た とき、普通の人は大丈夫でも、アレルギーや過敏症の患者にとっては毒になると いうことがある。

■アレルギーはドイツの国民病

ところで、ドイツにはアレルギーを持つ人が3000万人も存在するといわ れる。花粉症も非常に広がっている。日本では杉花粉が多いが、ドイツではシ ラカバ花粉が中心である。そして、花粉症の患者は田舎よりも都会に多い。電 子顕微鏡で見ると、たとえばバード・エムスタール付近の花粉は非常に綺麗な のに対して、ベルリンやミュンヘンの花粉にはスモッグの微粒子が付着してい る。つまり環境公害が花粉とコンビネーションを組んで、アレルギーを起こす と考えられる。人間の肺の面積は80平方メートルもあり、一番花粉が飛ぶと きは、1日に8グラムも花粉を吸い込んでいる。杉やシラカバ花粉の対策プロ グラムを作ったとしても、その他にいろいろなアレルギーが付いてくることを 知らなければいけない。

そして、花粉症のうち多くの人は食料品(食物)アレルギーを持っている。 このように複合したアレルギーのことを「クロス・アレルギー」と呼ぶ。一九 九九年の統計では、ドイツで人口の3%、約200万人が食料品によるアレル ギーに苦しんでいるという結果が出ている(ドイツの総人口は約8220万人)。 私自身(ルノー博士)はもっと多いと思っているが、200万人としても非常 に大きな数字といえる。食料品によるアレルギーは、ドイツでは国民病になっ ているのである。

■アトピー→食物アレルギー→喘息の連鎖

1990年から、ドイツに5箇所あるマルチセンター(MAS)で1300 人の新生児を調査した結果がある。まず、1300人の3分の1(約430人) にアトピーがあった。また全体の6%(約80人)がゼロ歳児の間に、鶏卵に対 する過敏症を示した。同じく6%が、1年後にイエダニの過敏症を示した。つま り食料品アレルギーがホコリのアレルギーに移行したことがわかる。さらに、イ エダニ過敏症を示したホコリ・アレルギーの患者のうち、ほぼ半数(約40人) が96年には喘息が発生した。つまり、最初にアトピーだった約430人の新生 児のうち、9%が6年間で喘息にまで発展したという形になる。

こうしたアレルギーの背景にあるのが、食料品の汚染、有害物質の問題であ る(以下、第2章へ続く)。
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